つま先立ちの恋
「何より大事なのは、肌が健康的でキレイに見えるかどうか。孫様はまだお若いので、そのままでも充分ですね。覆い隠すのではなく、ご自分の輝きを活かすことです」

スッとした指が私の肌を撫でるように動く。私は目を閉じた。目を閉じると感触がよくわかる。少しくすぐったいけれど気持ちが良かった。

「そして、内側から自然と血色が見えるように。本日はコーラル系のチークを使わせていただきます。冬の室内はエアコンが効いていて、ご本人が思う以上に頬に熱が上りやすいのです」

そういえば、よく頬が赤くてりんごみたいになってる時がある。あれ、気付いた時めっちゃ恥ずかしいんだよね。

「唇はもちろん、思わずキスしたくなるような唇を目指しましょうね。これは永遠のテーマですよ。こっくりと、けれど、上品に。孫様にはそうですね…ピュアなピンクがお似合いです。赤色は間違えるとヴァンパイアになってしまいますからね」

時々入るユーモア。面白いな、この人。だけど、不思議。この人の指も言葉も全部が魔法みたいだ。

だって外見がキレイになっていく度に、心にも魔法がかけられていくんだもん。だって私、今、葵ちゃんみたいに笑ってる。クスクス、て。女の子みたいでしょ?


「さあ、出来上がりですよ」


ふわっとケープが取り払われて、身軽になった私は目を開けた。


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