つま先立ちの恋
漆黒のスーツにグレーのシャツ、鈍い紺色のネクタイ。胸には朱色のハンカチーフかな。それが目印のように私には思えた。

こんなにたくさんの人がいる中で、スポットライトが当たっているみたいに見える。フーのいる場所だけが。

改めて思い知らされる。
ああ、やっぱりフーは私にとって特別なんだなって。


どれだけ体が硬直していようとも、私の心臓はいつだってフーに反応する。

どれだけ体が緊張していようとも、私の心臓はいつだってフーに会いたがる。

嬉しいのに泣きたくなって、苦しいのに近付きたくて。

もっと、もっと。


…………ねぇ、フー。

これが恋じゃないんだとしたら、私は他の恋なんていらない。


「フー…」

私の遠い呼びかけがフーに届いたんだろうか。誰かと話していたフーはふと目線を彷徨わせ、しばらくしてから私を見つけた。

「フー、、、」

重なる視線に私はもう一度名前を呼ぶ。小さな声で。



やっぱり私はフーが好きだよ。



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