つま先立ちの恋
怒られた時のことしか考えていなかった私はどんな顔をすればいいのかわからなくなる。このままフーと目と目を合わせたままでいてもいいのかもわからない。だけど、逸らせない。私には逸らせない。釘付けってこういうこと?


そうしたら、フーが動いた。その姿が大きくなる。こっちに向かって歩いてくる。

どどどどうしよう、どうしよう、どうしよう。

今度こそ怒られるかも。

ドキドキと音を大きく弾ませる心臓が止まりそうになる。こんだけ激しく内側を叩きつける心臓が止まるはずないのに、だけど、心臓が止まりそう。この矛盾をどうにかしてほしい。


フーは私たちの前で足を止めた。少し距離を置いて。

唇が震えて、私は自分でも気付かないまま上の唇と下の唇を内側に丸めていた。


「…何のつもりだ、明人」

潜めた声にビクっと肩が震える。すると今度は正反対の甘く響く声が空気を震わせた。

「何のつもりとは、どういう意味ですか?冬彦サン。」

「今更…いつかの仕返しのつもりか?」

「仕返しされる覚えがあるみたいな言い方ですね」

「ふざけるなよ」

「もちろんです。」

余裕すら感じさせる明人さんに、フーの表情が微かに見えた。

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