つま先立ちの恋
フーは鏡じゃないから、この時、私が一体どんな顔をしていたかイチイチ写してなんてくれないし、ましてや説明なんてしてくれるはずもない。

だから、いつものように呆れた顔でため息をこぼして、すっと横を向く。

「お前、どこまであの男に踊らされれば気が済むんだ。いい加減にしろ」

いつものように呆れた声音で、そう言う。


だけど今日、違うのは……、


「……そう、だね。ごめんなさい。」


私の方だった。目線を落としたまま、私が続ける。

「ごめんね。また、迷惑かけちゃって。ダメだね、私、こんなんじゃ…」


いつもと違う言葉が素直に口からこぼれていたんだ。


< 439 / 468 >

この作品をシェア

pagetop