つま先立ちの恋
背伸びしながらドアノブを回して、こっそり部屋の中をのぞきこんだ。部屋の中には布を被せられた家具が散らばっていて、そのひとつに軽く腰かけるようにして、彼はいた。

彼が物音に気付いて顔を上げる。それから扉の後ろに隠れている私を見つけて、ため息まじりに言った。


「・・・またお前か」


ててて、と私はフーの所まで、

「おま…!「あけましておめでとうございま~す!」

避けようと立ち上がったフーの膝に突進した。


私とフーは年に一度、新年会のご挨拶の場で会える。まるで織姫様と彦星様みたいでしょ。

二回目に会った時、フーは私のことなんて覚えてなかったみたいだけど、こうして毎年この秘密の部屋で会うようになって、この頃にはもう、私を認識してくれるようになっていた。

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