つま先立ちの恋
「お前…いい加減にしろよ。毎年毎年…」

「フーったらてれてるのね」

「誰が。ガキはおとなしくあっち行って、お年玉でももらってろ」

「わたし、べつにお年玉なんていらないもん。フーにあいにきてるんだもん」

「その呼び方やめろって言ってるだろ。いくつ年上だと思ってんだ」

「じゅうに!」

「わかってるならもっと敬意をはらえ」

「けえいって、なに?」

「敬えってことだ」

「うやまうってなに?」

「自分で調べろ、それくらい」

そう言ってズレた眼鏡をかけ直す指が、ものすごく大人に見えたのを覚えている。この頃のフーはメタルフレームの眼鏡男子だった。

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