東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
よく見ると、うつむいた姿勢で立つ彼の両目から、ポツポツと涙が机上に落ちていた。
あたしはゆっくりと彼に歩み寄ると、彼の前にハンカチを差し出した。
「ロム、大丈夫…?」
心配して言うあたしに向かって…、
「誰のせいだと思ってんだよッ!!」
…って突然、大声を上げてハンカチを払いのける彼。
「頼みもしないのに、お姉ちゃんぶって余計なことするから、こんなことになったんだろっ?」
柴犬の子犬みたいなロムが、ココロの牙をむいてあたしに噛み付いてきた。
「ごめん……まさか、こんなことになるなんて夢にも思わなくてっ…」
「もう、いーから放っといてくれッ!」
あたしが言おうとするのをさえぎって、彼が叫ぶ。
「いつまでも俺のことを舎弟(しゃてい)みたいに思ってんなよッ。もう昔とは違うんだッ。今のクリスは浦島太郎だッ」