東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
モップであたしをトイレの個室の中に押し戻そうと必死のキクチ・ヨーコ。

「邪魔よ、アンタはどいて! あたしはユーと話がしたいの!」

アンタなんかに話はないんだ。

ホント、心底、邪魔だしウザイと思う。

「近藤さん、命令よっ。いま持ってるモップの柄で、栗栖さんの“みぞうち”に一撃加えなさいっ。剣の心得のあるあなたなら簡単でしょっ?」

「そ、そんなこと…」

「さっ、やって。やるのよ!」

「………」

泣きながら首を激しく左右に振るユー。

「世の中は“Give & Take(ギブ・アンド・テイク)”。あたしの言うとおりにすれば、イジメのターゲットを栗栖 愛に変えてあげる。だから、さっ、やって。やりなさいよ!」



「ごめん、アイっ…!!」



その瞬間、ユーがその手に握り締めていたモップの柄の先が、あたしのみぞうちを正確に突いた。

「がふっ…」


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