東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
彼が言って頭を下げる。

「ありがとうございますっ」

あたしも言って頭を下げる、何度も、何度も。

「じゃあ、あたしたちの代わりにマッキーのライブ、楽しんできてくださいね~」

フツーじゃ、考えられないような親切をしたのに、なんの恩着せがましさもなく、あたしと彼に手を振って去っていくふたりの女のコたち。



「よかったな、クリス」

「うん」

身近なヒトたちに次々と冷たくされたあたしにしてみれば、“世の中にこんなヒトもいるんだ”って、ある意味、衝撃的ですらあった。



PM6:30――

ライブ開演。

あんなに親切にしてもらっときながら、こんなふうに思うのはすごく失礼だとは思うけど、ぶっちゃけタダでもらったチケットだし、席の位置は全然期待してなかった。

でも実際は、1階席の前から6番目のイイ席で、ライブ中、マッキーの額に出た玉のような汗のひと粒ひと粒が、ハッキリ肉眼で見えるくらいにステージから近かった。

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