東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「お金はいらないです。タダでいいです」
「た、タダ…!?」
あたしは自分の耳を疑った。
「はい。誰も、もらってくれなかったら、このチケットだって、あとはゴミ箱に捨てるだけですし、それよりか誰かライブを観たいヒトにあげたほうがいいな、って思って」
「ほ、本当にタダでいいんですか…?」
失礼だとは思ったけど、いちお念のために訊いてみた。
「でも、それじゃ悪いですよ」
横からアシくんが言った。
「俺、当日券の値段くらいの金額でよかったら払えますから、それで」
「タダでいいんですよ。あたしたち、実はさっきからチケットもらってくれるヒトがいないか、ずっと探してたんです」
そのとき、あたしの目には、そう言って微笑む彼女が女神か天使みたいに見えた。
「はい、どうぞ」
そう言ってアシくんの手に2枚のチケットをタダで渡す彼女。
「ありがとう」