東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

「お金はいらないです。タダでいいです」



「た、タダ…!?」

あたしは自分の耳を疑った。

「はい。誰も、もらってくれなかったら、このチケットだって、あとはゴミ箱に捨てるだけですし、それよりか誰かライブを観たいヒトにあげたほうがいいな、って思って」

「ほ、本当にタダでいいんですか…?」

失礼だとは思ったけど、いちお念のために訊いてみた。

「でも、それじゃ悪いですよ」

横からアシくんが言った。

「俺、当日券の値段くらいの金額でよかったら払えますから、それで」

「タダでいいんですよ。あたしたち、実はさっきからチケットもらってくれるヒトがいないか、ずっと探してたんです」

そのとき、あたしの目には、そう言って微笑む彼女が女神か天使みたいに見えた。

「はい、どうぞ」

そう言ってアシくんの手に2枚のチケットをタダで渡す彼女。

「ありがとう」

< 233 / 301 >

この作品をシェア

pagetop