東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
今はなにも言いたくない。
今はおクチを、この極上のスイーツを味わうためだけ専用に使いたい。
さすがはバレンタインデーに贈った相手と100%両想いになれる“魔法のチョコ”を作るパティシエだけのことはある。
そして、こんな美味しいスイーツを作っている凱を目の当たりすると、たとえ学校になんて行かなくても、彼が充実した毎日をおくっているんだ、ってことが手に取るようによぉ~く分かった。
まぁ、そんなこんなで“王様のショコラ”の下見を終えたあたしは、今度はバレンタインデーの前日にロムを連れてくることを約束して、店をあとにした―――――
× × ×
東京の冬の日暮れは早くて、まだ6時を過ぎたばかりだっていうのに、店の外は真っ暗だった。
若い女の夜道の一人歩きは危険だっていうけど、それはたとえ自転車に乗ってても同じ。
7年ぶりで再会した凱とのおしゃべりが楽しくて、ついつい王様のショコラに長居しすぎてしまったことを、少しだけ後悔しながらペダルをこいでいると…、