東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「オイっ!!」
…って突然、若い男の大声で呼びとめられて、あたしは心臓が止まりそうなほど、ビクッとしてしまった。
キキィーッ!
あたしが急ブレーキで停車すると、後ろからきた自転車があたしに並んで停車した。
自転車に乗ってたのは学ラン姿のデカ島こと、大島軍司だった。どうやら部活の帰りらしく、並んでいるとプ~ンと汗の臭いが漂ってくる。だしかラグビー部だっけ?
「なんだ、デカ島じゃん。急にデカイ声かけるからビックリしたよ」
「悪りぃ、悪りぃ。別に脅かすつもりはなかったんだ。それより、お前、こんな時間まで家にも帰らねぇで、どこで道草喰ってたんだ?」
あたしがまだ制服姿だから、彼はこんなことを言うんだろう。
「喰ったのは道草じゃなくて、チ・ヨ・コ・レ・イ・ト♪」
「チョコレート? ひょっとしてバレンタインのチョコを買いに行ってたのか?」
「まぁね」
そう言うと、あたしは自転車のペダルをこいだ。デカ島もあたしに並んで自転車を走らせはじめる。