ふしだらエデュケーション
「いいですか、みなさん。Rの発音には注意が必要です。これは日本人が苦手とする発音だと言われているわね」

窓際で足を止め、次のターゲットをチョイス。

「じゃあ……一之瀬君。
“Repeat after me”
先生の後に続けて。
“Martin”」

「マーティン」

「ダメね。モァーティン。はい」

「モーティン」

「うん、おしい。モォァーリン。はい」

「モアーリン」

「違うの。ムォァーリンッヌ。はい」

「ムオアリンヌ」

「……唇の形がダメなのよ、一之瀬君。Rを発音する時はね、キスをするように唇を丸めるの。ちょっとやってごらんなさい」


一之瀬君が口をすぼめて見せる。


「もうちょっと、こう……突き出すような感じね。目を閉じてキスするところを想像してみて」


鼻先五センチの距離で、私がお手本をやって見せる。

彼が眉間にしわを寄せて唇を突き出す。
< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop