【短編集】僕達の夏
 ドールだろうが誰だろうが失礼は失礼だ。全く。


 だけど私は一見(友達いわく)超優等生に見えるらしい。
だから初っ端から『馬鹿』呼ばわりされるのは珍しかった。
 まぁ実際は赤点をとるかとらないかのDead or Alive。崖っぷちを行く超スリリング学生なんだけど。


 気付けばマスターもリリーと呼ばれたビスクドールも物珍しげに私を見ている。

「何見てんのよ!」
「Σこっちの台詞だしーっ!」

そんな私とリリーのやり取りをマスターはほほえましく見守ってる。
…はっ!本来の目的を忘れかけてるじゃないか私っ!!

「あのっ私…」
「道に迷われたんですよね。」

私が言う前にマスターはやんわりと言った。

「そして、道以外でも迷われている。」
「…へ?道以外?」

素っ頓狂な返事にリリーが口を挟む。

「あんた今悩んでる事があるんでしょ?」

言われて真っ先に思い当たるのは課題の事。

「ここは悩みの中で堂々巡りになってしまった人が迷い来るお店なんですよ。」
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