【短編集】僕達の夏
男はフードの中の顔をくしゃりと歪ませて笑った。
人間らしくない笑い方だ、と思った。
「俺はこっちの世界の人間じゃねぇから法では裁けんよ」
そういわれるとすとんと僕の中で納得出来るものがあった。
今時の風体としてはまず見られないマントや、神出鬼没の神秘性。
なによりこの少年の存在感は一個体の強烈なものとして同じ世界の人間だと考える方が難しいとすら思えた。
「で、こっちの世界でない貴方が僕に何か?」
「そうそう。」
嫌みや中傷ではなく素朴な疑問として聞く僕にそう言うと僕のベッドにどっかと腰掛けた。
長身の割にはかなり細身のようだがやはりベッドは大きく軋む。
叔母が起きていないといいけれど…。
「さて、」と前置きして少年はこう切り出した。
「元いた世界に戻れなくなった。戻る手伝いをしてほしい」