【短編集】僕達の夏
「ずうっと夕方と夜しかないって事かい?」

「この世界の言葉を使えばそうなる。ま、夜より夕方の方がよっぽど長いけどな」


「…もしかして、神隠しが起こるのはこっちの世界が夕方か夜の時だったりするのかい?」

「あぁ、そのようだ。よくわかったな」









…"逢魔ヶ時"とは、よく言ったものだ。

多分こちらとあちらがリンクしやすくなるんだろう。

そう考えると、日中には神隠しに逢わない確率は高そうだ。

ただ学校をサボっただけになってしまったが、まぁいいか。

そこら辺を散策して、時間を潰す事にした。







平日の小さな公園には人気がなかった。

最近は公園で遊ぶ子供も、それゆえに子供を遊ばせながら公園で立ち話をする親もめっきり減った。




こんな世間ではもはや"神隠し"も"誘拐"として俗っぽいラベルが貼られている。



昔は"神隠し"と言えば神様が気に入った子供を山に連れていく事だとされていた。




まるで神様が人間と同じ位置に立たされたようで、なんだか皮肉だった。





遊び相手をなくしたブランコが、所在無さげに揺れていた。
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