かくしご
若い女性
 信太郎にとって、
女性にこんなふうに言われたのは、初めてだった。 
 
 どうせ、冗談だと自分に思い込ませて、
そろばんに目を落とした。 
しかし、頭の中では
もう 美代子を銀ブラしている自分を思い描いていた。

 そのまま、どうも仕事がはかどらず、
少し皆より遅れての退社となった。

 外へ出ると、美代子が待っていた。

 「課長さん、遅かったですね。
 待ってたんですよ。行きましょ。」
とさっぱりと言う。 

 信太郎に考える暇なく 美代子は、先を歩きだした。
 「君。・・」
と声をかけても 鼻歌交じりで、さっさと歩いていた。

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