『私も歩けばイケメンにあたる♪』
日付が変わり、何度目かの寝返りを打った後、私はゆっくり上体を起こした。
トイレにでも行って、気分を変えたら寝られるかも。
というか、このまま横になってるのが苦痛で仕方がない。
ゴージャスな部屋といっても、さすがにトイレまではついてないので、
物音を立てないように、廊下に出た。
私の部屋からは、隣の部屋の前を通って洗面所につく。
その部屋は次男の清の部屋らしい。
長男の心も三男の範も、南に面した日当たりのいい部屋なのに、
清の部屋は、なぜだか、東側にあり、二人の部屋とは少し離れていた。
不思議な部屋の使い方してるよね。
ま、私にお母さんと別々に、南向きの部屋を用意するくらいだし、部屋数が多いから好きな部屋を選んだってことかな。
そんなことを考えながら、主不在のその部屋の前をゆっくり通った。
結局、昨日のうちに、清は帰ってこなかった。
なんでも、友達の家に泊めてもらうことになったらしい。
心さんも範君もイケメンだし、当然、清君もイケメンなんだろうな。
ちょっと楽しみだったりして。
あ、でも、お母さんが再婚したら、兄弟になるのか。
・・サイコン・・
あまり深く考えないようにしていた言葉を反芻して、頭を振った。
夜は考えない!
夜に考えると、余計なこと考えちゃうから。
「考えない、考えない」
ぶつぶつ言いながら、トイレのドアノブに手をかけた。
なんか、明かりが漏れてる。
誰か、消し忘れたんだ。
もう、電気代の無駄じゃん。
お金持ちだって、今はエコの時代なんだからね。
この時、気づいていれば良かったのに、
私は何の疑問も持たず、ドアを開けてしまった。