『私も歩けばイケメンにあたる♪』
部屋へ行こうと階段を上ると、ばったり会ってしまった。
今、一番会いたくない人物に・・。
「なんだ、痴女か。」
目が合った瞬間、はき捨てられる。
うっ、と言葉に詰まる私。
が、なるべく平静を装って、反論してみた。
「ち、痴女じゃありません!
昨日は、ちょっと眠れなくて・・
でも、目を閉じて横になってたから、
少し寝ぼけてたんです。
初めての家で、緊張してたし、疲れてたし!
あ、あの、すみませんでした。」
私は勢いよく頭を下げた。
よく考えたら、昨日は、恥ずかしさと情けなさで、
きちんとあやまってなかった。
今日も顔をあわせたのは、これが初めてだ。
「すみません、って、・・・何が?」
彼がゆっくりとこちらに近づく気配を感じる。
「何って、・・その、
の、覗いちゃって・・」
頭を上げながら、言葉をつむぐと、私の目の前、本当にすぐ目の前、
唇が触れそうなくらい近くに、薄茶色の瞳があった。
近すぎる距離に、悲鳴を上げなかったのは、
あまりに驚いて、声が出せなかったからだ。
「ふ~ん、覗いたって
何を見たわけ?」
さっきよりも一段と低い声で問われる。
怒ってはなさそうだが、
何を考えているのかよくわからない。
「何って、あの、
清君が、その・・
してるところを・・」
言いにくそうに答えながら、
距離をとろうと一歩後ろに下がった。
「・・どこまで見たの?」
下がった私を追い詰めるように
、彼は一歩歩み寄り、真剣な表情で聞いてきた。
・・・そんなに気にしてたんだ。
自分が覗いたことばかり気にしていた私は、
ちゃんとあやまりもせずに、雅に愚痴った自分を反省した。
そりゃ覗かれたほうだって、落ち込むよね。
鍵だって、男の子ばかりで暮らしてたら、
かけなくてすむのかもしれないし。
挨拶もしてなかったんだから、
私がいることだって、知らなかったのかもしれない。