『私も歩けばイケメンにあたる♪』

中学卒業式当日。

朝ごはんを食べている私に、

母は再婚という衝撃的な話を切り出した。

時間がないので、詳しいことは、式が終わった後で聞くことになったが・・。



もしかして、

結婚詐欺かなんかにひっかかってるんじゃないの?

大体、お金持ちの男性がうちのお母さんなんか相手にするわけないし。

それとも実はお父さんと結婚してた頃からつきあってたとか?
不倫?
不倫はちょっと抵抗あるなあ。

それともお母さんが一人で浮かれてるだけで、相手の人は軽い冗談で言ってみただけとか。


・・・おかげで、


式の間中、私の頭の中は、あれやこれやの妄想で膨らみ、
感激の涙に咽ぶこともなく、一人眉間にしわを寄せることになった。


まったく、
よりにもよって今日言わなくてもいいのに。


そんな私に、親友の雅(みやび)が話しかけてきた。


「ひかり~!
やっと終わったねぇ~。

このあと打ち上げ行くよね?
駅前のカラオケ予約してるって!」


「う、ん。
どうしようかな。」


ためらいがちに返事を濁す。


「え?なんで?
高校になったら皆バラバラなんだよ?
今日で最後じゃん!

・・・・・
なんかあった?」


雅が心配そうな顔で私を覗き込んだ。


「実はさ、うちの親
なんか再婚するとか言ってて。」


「えぇ~!
そうなの?」

「それで、
これから相手の家に行くって言うんだよ。
なんか迎えに来るとかって。」


「まじ?
ひかりのお母さんもやるね~。
相手はどんな人なの?」


「それがね、」



私が言葉をつむごうとしたとき、
なんだか教室の入り口がざわざわと騒がしくなった。


「倉本(くらもと)ひかりちゃんはいますか~?」





< 5 / 462 >

この作品をシェア

pagetop