『私も歩けばイケメンにあたる♪』
中学卒業式当日。
朝ごはんを食べている私に、
母は再婚という衝撃的な話を切り出した。
時間がないので、詳しいことは、式が終わった後で聞くことになったが・・。
もしかして、
結婚詐欺かなんかにひっかかってるんじゃないの?
大体、お金持ちの男性がうちのお母さんなんか相手にするわけないし。
それとも実はお父さんと結婚してた頃からつきあってたとか?
不倫?
不倫はちょっと抵抗あるなあ。
それともお母さんが一人で浮かれてるだけで、相手の人は軽い冗談で言ってみただけとか。
・・・おかげで、
式の間中、私の頭の中は、あれやこれやの妄想で膨らみ、
感激の涙に咽ぶこともなく、一人眉間にしわを寄せることになった。
まったく、
よりにもよって今日言わなくてもいいのに。
そんな私に、親友の雅(みやび)が話しかけてきた。
「ひかり~!
やっと終わったねぇ~。
このあと打ち上げ行くよね?
駅前のカラオケ予約してるって!」
「う、ん。
どうしようかな。」
ためらいがちに返事を濁す。
「え?なんで?
高校になったら皆バラバラなんだよ?
今日で最後じゃん!
・・・・・
なんかあった?」
雅が心配そうな顔で私を覗き込んだ。
「実はさ、うちの親
なんか再婚するとか言ってて。」
「えぇ~!
そうなの?」
「それで、
これから相手の家に行くって言うんだよ。
なんか迎えに来るとかって。」
「まじ?
ひかりのお母さんもやるね~。
相手はどんな人なの?」
「それがね、」
私が言葉をつむごうとしたとき、
なんだか教室の入り口がざわざわと騒がしくなった。
「倉本(くらもと)ひかりちゃんはいますか~?」