鬼畜な俺様執事
見慣れた道を通り、たどり着いたのは、以前二人で来たことのある海だった。
車から降り、朔夜は私の手をひき、砂浜へ向かっていく。
私は、靴のなかに砂が入らないよう気をつけながら、ゆっくりと朔夜の後ろをついて歩いた。
海の香りと、少し塩辛い風が私たちを包んだ。
波打ち際近くまで来ると朔夜は立ち止まり、私は隣に並んで静かに波の音をきいていた。
初めて二人でここに来たときのことを思い出しながら、私は繋いだ手をそっと握り締めた。
朔夜はそんな私の手を握り返し、不意に口を開いた。
「綾香」
名前を呼ばれた私は、自然と朔夜に視線を向けた。
真摯に私を見つめる朔夜と目が合った。