あたしと彼のオトナな契約
「晋也さんって、キス好きですよね」
動揺したら負けだと思い、あたしは真っ直ぐ晋也さんを見た。
だって晋也さん、あたしを動揺させたくて不意討ちのキスとかしてくるんだもん。
「俺? うん、キス好きー。 お前の唇、柔らかくていーんだもん」
そう言って、意地悪く笑う。
あたしは慌てて目をそむけた。
顔が赤くなっちゃってたの、バレたかな?
「あたしの唇が、じゃなくて、女の子の唇が、でしょ」
ぷくーっと頬を膨らませてみる。
運転席でそのあたしの頬っぺたを、晋也さんがつんつんとつつく。
「頬っぺたやわらけ~」
とか言いながら。
昔から、色んな人に『頬っぺた柔らかいね』って言われてたけど…
ただの贅肉じゃん、って思ってた。
でも今は、ちょっと嬉しい。