チェリーをあげる。
ある日の夕方。
服装もメイクもバッチリ決めた私はいつものように自転車に乗って、
渡さんが勤めるレンタルショップへ足を運んだ。
店に着くとすかさず従業員専用出入口を見つけ、そこで渡さんが来るのを待った。
6月ともなると陽がなかなか沈まないため、7時になるのがひどく先のことのように思われた。
それでも彼の出勤を辛抱強く待ち続けると、
7時少し前に黒い軽自動車が現われて、私の目の前で停車した。
よく見れば、
その運転席から降りて来たのは彼…、
渡さんで。
目の前を通り過ぎようとしている彼に、私は思わず叫んでいた。