Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
『彼女』が浴衣の前を開けた
――― アニキも
青山さんの動きも
一瞬にして止まって
…お腹の、あの"痕"を見て
絶句する
二人はその傷痕を
初めて見たみたいだった
私も即座に
キツく、目を塞いでしまった
「…… こんなの
何でもないんだよ
勲章くらいに、思ってるよ
1番前に立ってるヴォーカルだもん
まだ投げられた事ないけど
タマゴとかさ、ペットボトルとか
食らうのも、役目でしょう」
……アニキは
泣きながら
『彼女』の手を握った
彼女も強く、握り返す
その手を引っ張って
アニキは彼女を抱きしめた
『…俺はタマゴ投げられたら
やり返しに行く』
彼のその言葉に
軽く、吹き出してしまう
「やりそう」と言って笑った
…アニキは
まだ『彼女』を抱きしめたままだ
「…クウヤ
約束、守ってくれて ありがとう」
「……当たり前だ」
「でね…」
「…うん」
「…のぼせそう」
「うわっ ゴメン!!」
慌ててアニキはザバッと引き揚げて
青山さんに『彼女』を預ける
青山さんも引き受けて
横に『彼女』を座らせた
お酒用に持って来たっぽい、
ロックアイスが入っている
ガラスの入れ物
そこから一個、小さめの氷と
彼女の顎を取って
口にポンと、放り込む
そして、自分の膝の上に倒して
横に寝させた
空を見た『彼女』の白い指が
天を射す
――― そこには、天の川
波の音の中
暫く皆で、上を見てたけど
青山さんだけは
『彼女』の顔を見てた
… 色々あったのが
わかる顔
でもそれが
『彼女』の顔を見ていると
ほどけて行く感じがする
抱えて来た
見えない傷の大きさは見えないから
…でも、あのアニキが
その事件が
どれだけ大きな痕を付けてたか解る
無くした物の大きさも