Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



「あ、王子、
花火大会、何時頃から?」

「えと、ここから二キロ位先の海岸で
7時から始まる」

「そ、ならまだ
時間に余裕あるわね

王子の様子見ついでに来たけど
ちょっとクウヤと仕事の話してくる

――せっかくだし、
どうせ王子の事だから
着崩すだろうし、花火大会
アタシも行くわ

玄関に、ゲタの用意もしておくからね」


「うん
…イッちゃん ありがとう」


ナカマさんは
アズさんの髪を、少し手直しして
「…女は咲いてナンボよ!」と
私達に投げキスしながら
階段を降りて行った



――ふと見ると
鏡台の前に、口紅が一本

私はそれを持って
ナカマさんの後を、追い掛ける



「――ナカマさん!忘れ物!」

ナカマさんは
"あらっ!"って感じで
「ありがと!」と受け取り
すぐ前を向いてしまったんだけど

私は
どうしても気になる事があって
それを質問してみた


「――あの!
なんでアズさんを、王子って
呼ぶ人が居るんですか?!」

――― 野外でも、いたんだ



ナカマさんは笑いながら

「…あずるの、昔のあだ名

私は
王子にやって貰った
生まれて初めてのお化粧で
本当の自分に、なれたのよ――


今思えば、オバケみたいで
下手くそ極まりなかったけど

…私にとってはこの世で最高の
メイクアップアーティストだったわ」





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