Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜




下から麦茶と
特売の、メロンゼリーを持って来た

床に置いた紙袋を見て
「何の本買って来たの?」と聞かれる

「Playman
"CheaーRuu"が載ってたから」

「見ていい?」

「うん」



しばらく30Pまでを
めくっては繰り返す


「…アニキにさあ」

「うん」

「家出して東京行くから
家泊まらせてくれって言ったら
"ジュラ紀から出直して来い"って
電話切られた」

「…なんでジュラ紀」

ゼリーを食べながらテーブルに手を付く


そして下から声

「ユカ!新聞とって来てって
言ったでしょ〜!」

「下にいるんだから
呼ばないでよー!
お母さん取りに行けばいいでしょー!」

「糠床作ってんのよ!
とって来ないと
明日から茄子の漬け物出さないからね!」

「……しかたないなあ」

そう言って立ち上がると
マキちゃんが笑い出した


階段をドスドス降りると
お母さんが台所の床で
しゃがんで何かしてる

庭のサッシが開いてて
レースのカーテンが揺れてた

玄関には
少し隙間があって、風通し

面倒臭いから
お母さんのサンダルを履き
チェーンを外して、玄関を開けた


ポストには新聞以外にも
チラシとかダイレクトメール
ゴソっと取って大股歩きして
玄関に入り、閉める


リビングのテーブルに
バサリとそれを置く

何となくテレビをつけると
クイズ番組がやってて
……答が解らなかったから
問題を聞いていないふりをした


―― 新聞とチラシの隙間から

真っ青な無地の、封書の角が見えて
急いで抜き出した


切手が貼ってあり、表にはウチの住所


裏を、みたらそこには


『青山 竜治』






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