天使の涙(仮)

勢いよく振り向いた愛しい人は、私の姿に驚いているようだった。
だけど、すぐに悲しそうな目で私を見つめた。

彼の言葉を待ってみたけど、何も発せられることはなかった。
ただ見つめ合う二人にどれだけの時間が流れたのだろう。


沈黙を破ったのは…


「あっ、アタシ今日は帰るね…。」


美都子だった。

まるで私が存在していないかのように、そう諒二に告げて私の横を素通りして行った。
この時間、彼女と視線が交わることは一度もなかった。


そのときにやっと理解した。
彼女は、美都子は親友なんかじゃなかったんだと。
初めからそんなものなかったんだと。


そう思うと、目の前にいる愛しい人さえ、幻なんじゃないかとさえ思えた。


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