天使の涙(仮)
彼の家に着く頃には、頭から爪先までびしょ濡れだった。
家の前に彼の姿があった。
それと、もう一人。
ちょうど彼と重なって誰なのかわからない。
だけど、異様な雰囲気がして、すこしづつ歩を進めていった。
人生の中で、嫌な予感と良い予感が当たる比率は嫌な予感の方が圧倒的に多いんだろうと、何故かそのとき確信した。
少なくとも、私はそうだ。
もう、私は愛しいあの人の隣にはいられない。
いちゃいけないと、目に映った光景を見て悟った。
だって今、たった今。
彼は私の前で、私以外の人を抱きしめているんだから。
もう、何も信じられない。
この状況さえ上手く飲み込めなくて、ただ二人の姿が次第にぼやけていくだけだった。
「…どぉ……して…」
諒二が抱きしめているのは、紛れもなく美都子だったんだから。