【短】『夢幻華 番外編』偽りの恋人
「俺の恋人の条件知ってる?」
「はい」
「髪は黒髪でストレート。付き合っている間は伸ばすこと。希望を言えば腰まで伸ばして欲しい」
「はい」
「化粧は嫌いだから絶対ダメ。それからリップ程度なら良いけど、グロスとかも苦手だ」
「はい」
「俺の携帯番号は、1年以上付き合ったヤツにしか教えない。俺からの一方的な連絡になるけど良い?」
「はい」
「あと、俺は生徒会とか、運動部の助っ人で忙しいし、デートなんかも余りできないかもしれないよ?」
「いいです。お付き合いできるだけで」
「ふーん…。もう一度言うけど、俺、本気で好きになった女にしか優しくないよ?あんたを好きになれる保証は無いけど?」
「……好きになってもらえるように…努力します」
大抵の女の子はそう言うけど、結局、1週間もすれば変わってしまう。
付き合っているのだから特別扱いして欲しいのだろうけど、俺にしたら、この間まで付き合っていた彼女と、今、目の前にいる彼女と、その辺の見知らぬ彼女は、大差ないんだよな。
本当に優しい男なら、ここではっきり断るんだろうけど、俺は優しくねぇもん。
彼女から最低の男のレッテルを貼られて、別れを切り出してもらうほうが良い。
どうせ、すぐに気付くはずだ。
彼女達が惚れている俺は、勝手に作り上げた虚像でしかないってこと…