【短】『夢幻華 番外編』偽りの恋人

「健気だね。…俺のどこが好きなの?」

「スポーツも出来て、頭も良くて、凄くカッコイイし…とても優しくて、明るくて…私の理想です」

ほら、上っ面しか見ていない。

彼女達の俺への気持ちは、アイドルに憧れているのと同じだ。

手の届かない存在だと思うから恋焦がれる。

ひとたび手に入れても、俺の気持ちが無いとわかれば、あっさり冷める。

虚像に恋するなんてその程度のもの…。

「わかった」

「え?」

「いいよ付き合っても。でも、たぶんすぐに俺のことなんて嫌になるよ」

「そんな事ありません。嬉しい」

本当に嬉しそうな彼女の長い髪が、動きに合わせて揺れる。

無意識にその中に、愛しい少女の面影を探してしまう自分がいる。

「あの、名前で呼んでも良いですか?」

「ごめん。それは遠慮して」

俺を『暁』と呼んで良い女は、ただ一人、杏だけ…

付き合うことは誰とでも出来ても、やっぱりそれだけは譲れない。


< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop