【短】『夢幻華 番外編』偽りの恋人
「健気だね。…俺のどこが好きなの?」
「スポーツも出来て、頭も良くて、凄くカッコイイし…とても優しくて、明るくて…私の理想です」
ほら、上っ面しか見ていない。
彼女達の俺への気持ちは、アイドルに憧れているのと同じだ。
手の届かない存在だと思うから恋焦がれる。
ひとたび手に入れても、俺の気持ちが無いとわかれば、あっさり冷める。
虚像に恋するなんてその程度のもの…。
「わかった」
「え?」
「いいよ付き合っても。でも、たぶんすぐに俺のことなんて嫌になるよ」
「そんな事ありません。嬉しい」
本当に嬉しそうな彼女の長い髪が、動きに合わせて揺れる。
無意識にその中に、愛しい少女の面影を探してしまう自分がいる。
「あの、名前で呼んでも良いですか?」
「ごめん。それは遠慮して」
俺を『暁』と呼んで良い女は、ただ一人、杏だけ…
付き合うことは誰とでも出来ても、やっぱりそれだけは譲れない。