中絶~僕は君を殺したい~
11-2 理由






ぼくはそれでもあきにキスさえ出来ずにいた。






こんなにも気分はいいのに。





アイラインだけ引いているあきのねがおを見る。





とじたまぶた。




みじかいまゆげ。




だんごみたいな鼻。




したくちびるがぶあついくちびる。





めせんをふとんの中へもぐりこませる。





ちいさなむね。




さこつ。




ほそいうで。




ピアノをやっていた細く長いゆび。





下腹のあたりでそえられている。




なにかを守るように。




いのるように。



みぎてのひとさしゆびで左手の甲をなでている。



のどがコクン、と動いた。



くちびるをなめて



ためいき。



ぼくはふれる気になれなかった。



「もっと・・・もっと・・・強いくすりがなきゃダメなのかな」



ぼくはつぶやいた。



どんどん落ちていくような気がする。



でも



止められないんだ。
< 72 / 87 >

この作品をシェア

pagetop