リアルシティー〔前編〕
第2章
 6月23日、梅雨入りしたというのに朝から快晴で、お昼の気温は32度まで上昇した。
うだるような暑さの中、綾子は14時に六本木に向かった。
綾子の住む恵比寿から六本木まで地下鉄でひと駅5分の距離だった。
綾子は14時半過ぎに六本木センタービルに着いた。
1Fエレベーター手前に『(株)バーチャル・エクィップメントモニター説明会会場30階東2号会議室』と案内板があった。
説明会まで30分ほどあったが、綾子はエレベーターに乗り30階へ上がった。
エレベーターを降りると案内板が置いてあった。案内板に従って歩いて行くと、会議室の前に受付のテーブルに受付係がいた。
 「モニター説明会はこちらですか?」
「はい、この中が説明会会場となっております」「本日はお越し下さいまして、ありがとうございます。お名前を頂戴できますか?」
「藤田です」
「藤田綾子様ですか?」「えぇ」
「では、藤田様。この名札をかけて、お入り下さい。お席は、入口を入って奥の2列目になっております」
「はい、分かりました」名札には『REAL1295 お名前リョウ様』と書かれていた。
『名前はリョウか。じゃ、モニターは全員ニックネームしか分からないんだ』
 会場に入ると1人用の大きめのテーブルが4列ずつ10人分並べられていて、すでに5人来ていた。
綾子は奥の列の2番目のテーブルについた。
テーブルの上にニックネームが書かれた札が貼り付けてあった。
2時50分、10席全てが埋まった。男性が7人、女性が3人である。
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