この胸いっぱいの愛を。



入学式が終わった後。


見た目からして完全に浮いている俺に、誰も話し掛けてくるはずがなく。


嫌でも耳に入ってくる話し声や笑い声の中を、一人で歩いていた。




別に、寂しくなんかない。


こんな状況、もう慣れっこだし。


自分にそう言い聞かせながら、教室へと急いだ。


………仕方ないんだ。


自分が決めたことだから。




そう思って、諦めていた。









早足で歩き、角を曲がろうとした、刹那。









「おい、そこの新入生!」




大きな声が、背後で響いた。




……なんだ?先生か?


俺は大して気にも止めず、歩くスピードを速めようとした。


廊下は、入学式を終えて体育館から出てきた人で溢れ返っている。


まさか呼ばれているのが自分だなんて、誰が思うだろう。




しかし、足音は段々近づいてくる。


確実に、俺に向かってきている。


────────そして。









「おい、無視をするな」




ガシッ、っと、音がするくらい強い力で、右肩を掴まれた。




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