この胸いっぱいの愛を。



俺は呼び止めた奴に、無理矢理後ろを向かされた。


……派手な見た目の転入生と、それを呼び止める男。


俺がさっきまでと違う意味で注目を浴びたのは、言うまでもない。




「……何すか?」


驚きを隠しながら、その人物を見上げた。


身長差が、かなりある。


当時背が小さかった俺は、180センチほどあるその人を自然と見上げる姿勢になった。


上履きには、緑のライン。


その色で、一学年上の先輩だと悟った。






「何すか、ではない。
 なんだ、その格好は!!」


「へっ?」


唐突に言われて、俺はなんとも間の抜けた声を出してしまった。




─────正直、ビックリしたんだ。


まさか入学式早々、注意されると思ってなかったから。


しかも、初対面の先輩に。




「……別に、先輩には関係ないっすよ」


そう。

この人は、何も関係ない。


俺に注意をしたところで、何の得にもならないじゃないか。


それなのに、なんで……




「関係なくないだろう!
 とりあえずその乱れた服装をなんとかしろ!」




なんで、そこまでして俺に構うんだ?




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