この胸いっぱいの愛を。



─────次の日。


俺は結局金髪のまま、学校に行った。


確実に叱られるとわかってたけど、それでも良いと思った。


だって、俺が髪を黒く染めて、ピアスを外してしまったら……


あの人との接点が、なくなってしまうから。




そんなことを思うなんて、女みたいだ。


俗に言う、恋する乙女?みたいな。


自分でもそう感じたけど、走りだした気持ちは、もう止められなくなってた。







その日、約束どおり俺のクラスにやってきた先輩。


俺は案の定、みっちり説教された。




「おい、何を笑っているんだ!」


「えっ、笑ってなんか……」


説教の最中に先輩に言われて、初めて気付いた。


頬の筋肉が、いつの間にか緩んでいた自分に。


笑ったのなんて、いつぶりだろう。




「全く、仕方のない奴だな…」


困ったような顔をしてため息を吐く先輩。


“仕方のない奴”。


決して誉められてるわけじゃないのに、その言葉でさえ俺を喜ばせてしまう。




………叱られて悲しいなんて、一度も思わなかった。


それどころが、嬉しかったんだ。


“仕方のない奴”とか言いながらも、俺を構ってくれる人の存在が。




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