この胸いっぱいの愛を。



「お前、クラスは?」


「………B組っす」


俺は先輩から目を逸らしたまま、ボソボソと質問に答えた。


……なんとなく、目を合わせるのが恥ずかしかったんだ。


肩を掴まれて振り返った時に、一瞬だけ目が合ったけどすぐに逸らしてしまった。




俺を真っ直ぐ見つめるその瞳に……


吸い込まれてしまいそうだったから。




「B組か。覚えておこう」


よく通る声でキッパリと言って、先輩は俺の目を覗き込んだ。


男の先輩なのに……


一瞬、ドキッとしてしまう自分がいた。




「明日までに髪の色を直してこい。
 それから、ピアスも外しておけ」


偉そうに指摘すると、先輩はクルリと踵を返した。


そのまま、俺からどんどん遠ざかっていく。


その様子を、ボンヤリと見ている俺。




しかし、先輩は階段に差し掛かろうとしたところで、思い出したように振り返ると、


「明日、お前の教室まで確かめに行くからな!」


と、大きな声で叫んだ。




先生じゃあるまいし、なんて想いながら、結局何も言い返せなかった俺は……


人気の少なくなった廊下に、一人呆然として立っていた。




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