この胸いっぱいの愛を。



メールの内容は、こうだった。





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【20XX/ 5/20 08:21】
【From:将兄】
【Subject:すまん。】

《急用ができた。
 悪いが、先に帰っていてくれ。》

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………用件、これだけ?


「なんだ……」

私は安堵のため息を零した。

あの将兄が学校でメールするくらいだから、緊急事態かと思ったけど。

なんだ、こんなことか。


一緒に帰る約束してたからちょっとガッカリだけど、大したことじゃなくて良かった。

急用って、生徒会の仕事とかかな。


そんなことを考えつつ携帯をポケットに戻そうとした時。




「モーモっ!!」

「うわっ」

背中に大きな衝撃が走った。

振り向こうとしたら、至近距離にいるアユと目が合う。


「あ、あのさ。
 将兄からメール来てて……
 急用ができたらしいから、一緒に帰っても良いかな?」

遠慮がちに言うと、アユはニッコリと笑って私の背中を叩いた。

「良いに決まってるでしょ♪
 てゆーか、あんたのお兄さんってメールとかできるんだね!」

「そりゃあ、将兄だってメールくらい…」

できるよ、と言おうとして、私は口を閉じた。

実は、将兄がメールの打ち方を覚えたのはつい最近だったりする。

私が教えてあげたんだけど……

あれは地獄だったなぁ。


「ねぇ、お兄さんからのメール見せてよ♪」

「別に見て楽しいもんじゃ……


 って、いつの間に!?」

さっきポケットにしまったはずの携帯が、気付けばアユの手の中に納まっていた。




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