この胸いっぱいの愛を。



「どれどれ〜」

「もうっ、アユってば……」


ニヤニヤしながら私の携帯をいじるアユ。

私はそんなアユを呆れながら眺めていた。




「プ………っ」

「な、何?」

何がおかしいのか、携帯画面を見つめながら吹き出すアユ。

将兄のメールに、笑うようなとこあったっけ。




「こんな飾り気のないメール、初めて見たかも!
 お兄さん、絵文字とか顔文字使わない主義なの?(笑)」

「いや、主義っていうか……」

キャラじゃないでしょ、どう考えても。


将兄のメールに、“”とか“(≧ω≦)”とか“(o^∀^o)”とか入ってたら……


なんかちょっと、いやかなり嫌だ。

てゆーか、使う使わない以前に、多分使えないんじゃないかと思う。

どうやって打つのかわかんないんじゃないかな。

私、最低限のことしか教えてないし。

教える余裕がなかった、とも言う。

将兄だって、教えても使わないだろうからね。


「ありがと、面白かったよ☆」

「………どこが」

満足気なアユを冷めた目で見て、またため息。


「よし、じゃあ行こっか」

「え、どこに?」

「駅前の喫茶店♪」

アユは状況を把握できていない私の腕を強引に掴むと、有無を言わさず歩きだした。


…明日試験だってこと、わかってるのかな?




一抹の不安を感じながらも、私はアユに引っ張られるままに足を進めた。




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