この胸いっぱいの愛を。
「お待たせしました」
その声にハッとして見上げると、目の前には店員さんの笑顔。
「ホットココアになります」
彼はにこやかな笑みを浮かべてカップを私の目の前に置くと、颯爽と去っていった。
「今度はドジすんなよ(笑)」
「大丈夫だって!」
意地悪く笑った健吾にちょっとムキになってそう言い返し、カップに口を付ける。
まだ温かくて甘いココアが、喉に染み渡るのを感じた。
「………あ」
カップを置くのとほぼ同時に、健吾が小さく声を上げる。
「どーしたの?」
私が尋ねると、健吾が窓を指差した。
私と速見くんは振り返って窓の外を見る。
一見、何の変哲もない風景。
「あそこ歩いてるの、うちの学校の制服だわ」
アユの言葉に、目を細めて道路を挟んだ向かい側に視線を移す。
そこには確かに、海星中の制服を着た女子生徒が二人。
「あの人達、健吾の知り合いなの?」
ここは駅の近くだから、うちの学校の生徒が通るのは当たり前。
にも関わらず健吾が反応したのは、きっと顔見知りだからだ。
「いや、そういうわけじゃねーんだけど…」
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