この胸いっぱいの愛を。



再び窓の外を見ると、そこにはさっきまでなかった駿河先輩の姿が。


雑貨店のショーウィンドウを眺めていたさっきの先輩達二人に、声をかけている。




「あれ、もしかしてナンパ?」

健吾が眉間にシワを寄せて言う。


ナンパ、に見えなくもないけど。

駿河先輩が、そんなことするかな?

確かにパッと見はいかにも軽そうな感じだけど、意外と一途みたいだし。

あの話を聞いた分には、ナンパなんてしそうに思えないけど。




「まぁ、駿河先輩年上キラーだかんな」

「羨ましい!」とかなんとか言って、健吾は大きく伸びをした。


「健吾はモテないもんねー」

「うっせぇ!」


健吾とアユの言い合いが、右耳から左耳へ抜けていく。

それをBGMに、ぼんやりと窓の外を見ていた。




──────しかし、次の瞬間。


ナンパかと思われていた風景が、一転する。













「えっ……駿河、先輩?」




先輩が、片方の女子生徒の胸倉に突然掴み掛かって、すごい形相で何かを叫んでいた。




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