この胸いっぱいの愛を。



「……マジ?」

健吾は何度も目を擦って、窓の外を凝視している。

……いっつも笑顔の駿河先輩が、私にはまるで別人みたいに見えた。


「ナンパじゃなくて、喧嘩?」

アユが小さく呟く。


速見くんは何が何だかといった感じで、オロオロしている。




………何か、あったのかな。

いや、何かあったとしか考えられない。

そうじゃなきゃ、あの駿河先輩が女の子相手にあんなことするわけないもん。


一体、何が─────……









─────桃香!!




再び頭の中で響いた、将兄の声。

今度は、気のせいじゃない。

そんな予感が胸の中を支配する。


冷や汗が、頬を伝って流れ落ちた。




朝、将兄から送られてきたメール。

頭の中で響いた私を呼ぶ声。

女子生徒に掴み掛かった、駿河先輩。


「偶然、だよね」

自分自身に、そう言い聞かせる。




朝のメールは、単なる生徒会の仕事で。

駿河先輩とあの女の先輩達は、ちょっとした言い争いをしてるだけで。


あの時聞こえた声は……




声、は……………




「っ」

ガタッ




私は勢い良く立ち上がった。


─────そして。




「ごめん!」

「えっ、どこ行くの!?」


アユ達や周りの視線を振り払って、私は外へ飛び出した。




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