この胸いっぱいの愛を。



そう言われてしまっては、もう黙るしかない。


「ホンット、ムカつく奴。
 ちょっと勉強できて、ちょっとスポーツできるからって、調子乗ってんじゃねぇよ!」

「っ!!」


さっき殴られたところを、今度は思い切り蹴られる。

あまりの衝撃に、声すら出なかった。


まさか、あの手紙が俺をここに呼び出すための囮だったなんて。

俺は何か、悪い夢でも見ているのだろうか。


再び朦朧としてきた頭で、俺はそんなことを考えていた。




「ラブレターとでも思った?(笑)
 お前、ホントは頭空っぽなんじゃね?」

乾いた笑い声が、埃っぽい体育倉庫に響く。


「お前のことなんか、誰も好きになんねーよ」






そう、言われた瞬間。


頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。

脳裏を掠めたのは、桃香の無垢な笑顔。




なんで、こんな時に───……。


「なに、アンタ泣いてんの?」




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