砂漠の王と拾われ花嫁
「ラシッド殿下、素晴らしい宴ですな」


タヒールが是非とも開きたいと言った宴だった。


あたかもラシッドが開いたような言い方だが、いきさつを知っているラシッドにはその言葉はタヒールの自画自賛に聞こえた。


ラシッドは杯をグッと飲み干すと口元に皮肉めいた笑みを浮かべる。


「今日は特別な余興があると聞いた 楽しみにしているぞ?」



「もちろんでございます ラシッド殿下」


タヒールは深々と頭を下げる。


「我が娘をご覧なられましたでしょうか?それはそれは美しく、この中にいる誰よりも輝いておりますゆえ、是非ともファティマとお時間をおとり下さい」


タヒールが自分の娘を自慢げに言った時、部屋の中が一瞬水を打った静けさになった。


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