砂漠の王と拾われ花嫁
明日にはここを出なくては。



そうしなければまたいつ輩(やから)に襲われるとも限らない。



このしびれた身体は過酷な砂漠に耐えるだろうか。



薬は一回分しかなくまだ毒は抜けきっていない。



莉世が噛まれなくて良かったと心から思う。



莉世のように華奢で小柄な身体ではあの毒ヘビに噛まれていたらすぐに心臓まで毒が回り死んでしまったかもしれない。



このオアシスは安全ではない。



他の毒ヘビが出てこないことを願う。



* * * * * *


その頃、ラシッドの側近護衛アクバールとカシミール、そして馬番のカリムは2人のいるオアシスの近くまで来ていた。



アクバールは2人が前に行ったオアシスにいると確証はなかったが、宮殿に近い方のオアシスにいなかったのでこちらまで捜索を延ばしたのだ。



ラシッドよりも感覚が鋭くないアクバールは月を頼りにオアシスを目指した。




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