アイドル様とヒミツな恋を。
「……あのさあ」
突然叶多が声を出して、俺は少し驚いた。
叶多を見ると、何か決意が入り交じった顔をしている。
そして。
キッと俺を睨んで、
「俺、諦める気ないから。いつか、あんたから愛花を奪ってやる」
そう宣戦布告をして、足早に店のほうに戻っていった。
「はッ!誰がやるかよ」
――やっと掴むことのできた幸せを、手放してたまるかっての。
そう心の中で呟きながら、叶多の背中を見送った。
窓の外を見ると、大きな空は青く晴れ渡っていた。
でも。
そのむこうには、今にも降りだしそうな厚い雨雲があったことなんて。
今の俺は気づかなかった。