音楽バカ
コンクールに向けての練習が始まって1週間。
当然、前にも増して厳しい練習がまっていたことは言うまでもないが、問題はそれとは全く別のところで起きていた。
「声が出ない?!」
「そうなの。」
美音はかすれた声で答えた。
美音も合唱コンクールの予選に向けて厳しい練習をしていた。給食後のひとときも最近は練習に消えていた。美音がソプラノのパートリーダーなだけに、合唱部の中は混沌としているようだ。
「練習で潰したの?のど…」
「合唱部がそんな無理な練習しないよ。」
美音はかすれた声で笑った。
「じゃあ何でまた…」
「んー、季節はずれの風邪?」
今、季節は梅雨である。
「えぇッ、マジで?!」
「うん。
とりあえず山羽(ヤマハ)先生に報告しなきゃね…。
一緒に来てくんない?」
「いいけど…。」
職員室の角を陣取る山羽は、この学校の音楽を担当している。一部では母親的存在らしいが、合唱嫌いの希良にとっては魔女でしかなく、入学時から恐れ続けている先生である。
―トントンっ
「失礼します。」
声のでない美音に変わって希良が職員室に入室した。
「山羽先生はいらっしゃいますか?」
「あれ、珍しいわね。
どうしたの、宮路さん。」
そう言って山羽が近付いてきた。希良は若干、動悸が激しくなった。
(出た、魔女だ…)
「あの、黒澤さんが用事あって…。」
「?
なんで宮路さんがきたのよ。」
明らかな怪訝な顔。
「まぁ…訳ありで。」
と廊下の美音を伺った。美音は頷いた。
山羽と希良は廊下に出た。