音楽バカ
こうして練習は順調に進んでいった。
曲も完成に近づいた頃、希良は休憩時間に非常階段の踊り場に出た。
この場所は本来なら立ち入り禁止なのだが誰にもばれないので希良の秘密の場所である。
前はちょくちょく他の人も出入りしていたらしいが、なんでもそこで自殺した女子の霊だの学校の七不思議的にでき、今では誰も近づかない。
希良はあまりその手の噂は信じないたちなのでふつうにくつろいでいる。
手にした楽譜を眺めた。
この曲は大好きな曲だ。
希良が初めて聴いた吹奏楽曲だった。
なによりもこの曲は作曲家自身の思い出が詰められているという。
アルトサックスとユーフォニウムのデュエット。
1個下のアルトサックスの女の子の後輩とユーフォニウムの同級生が仲が良く、その光景を浮かべながらかかれたフレーズ。
タイトルだって自分が密かにあこがれていた先輩の誕生日だ。
(正確に言うとあとでそれは先輩の友達ということが判明するのだが…)
キラキラして活気あるこの曲が大好きだ。
このメンバーでこの曲をやりたかった。
鼻歌で口ずさみながら希良は目を閉じた。
7月の初夏の風が優しく髪をなでていった。