音楽バカ
その風に目を閉じた。
で、希良の耳には聞こえた。
合唱部の歌声が。
―「山毛欅の森の葉隠れに」
合唱部には一応、総勢30名弱の部員がいる。(男子は10名ほど)
それなりにうまい歌声が音楽室から聞こえてきた。
「…流浪の民、だっけ。」
美音が言っていた曲の名前だ。
8月のコンクールに向けてこちらもエンジンをかけ始めているらしい。
それぞれが、それぞれの場所で、自分の音楽を作り上げている。
あたしもがんばらなきゃな。
そう思い、部室に戻ろうと階段に足をかけたその時、壁にかかれた落書きがふと目に入った。
『俺たちの友情、死ぬまで!
沢山 雄輝
石森 政晴
河合 遙 03.16.』
察するに卒業前の、もしくは卒業式当日の落書き。
そして
「遙さんの…名前…?」