音楽バカ

「あ…。」

何してるんだろう、あたしは。

この部室にいる誰もが演奏が止まってしまった理由を悟っている。

あたしだ…。

「…ごめんなさい。」

向けられた静かな視線の中、希良は頭を下げた。
下げたまま上げられなくなった。

涙が溢れて上を向いたらもう駄目な気がした。

「……先輩、」

歩美が希良の方を向いた。

「どんまいです!」

「…!」

驚いて思わず顔を上げるとまっすぐな歩美の笑顔があった。

哀れみはない。

気遣いもない。

ただ共に音楽を演奏する仲間への励まし。

「そうだよ。」
「そです、先輩。」
「大丈夫だよ。」

みんな口々に言い出した。

「大丈夫です、宮路さん。
 もう一度最初からやりましょう。」

「…ありがとございます!」

逆に希良の涙は止まらなかった。

でも笑顔だ。



あたしは何を迷っていたんだろう。

ここには受け入れてくれる

音楽仲間がいるじゃんか。
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