音楽バカ
『それでは、笑原中学校合唱部の演奏です。』
司会の一言で壇上に合唱部がずらりと並んだ。
その中から美音を見つけるのは簡単だった。
白地に桃色の蝶があしらってある浴衣が美音だ。
今日はいつも下ろしている髪を上にまとめ上げている。
「やっぱり黒沢先輩って美人だよな。」
「宮路先輩の幼なじみらしいよ。」
「え…。」
「マジで?」
3人の後輩は希良の方を見てため息をついた。
「ちょ、何でため息?!
つかあんたたちの話、全部丸聞こえなんですけど!」
「いや、同じ幼なじみでこうも大差が出るものかと…」
「うんうん。」
「だよな。」
「あたし先輩なんだけどなに、この言われよう…」
確かに前に立つ美音はきれいだが、この3人は美音の腹黒さを知らない。
『みなさん、こんにちは。
笑原中学校合唱部です。』
並び終わったところで、紗穂子が話し出した。
「よっ、待ってました!」
さっきの後輩のうちの1人が叫んだ。
「やめて、恥ずかしいからッ!」
まわりの一般客が笑っている。
紗穂子もクスクス笑った。
『声援、ありがとうございます。』
「どーいたしましてー!」
『さて、私たちは今回2曲の歌を演奏させていただきます。
1曲目は[ほたる来い]、
2曲目は…
演奏するまでのお楽しみです。
それでは聴いてください。」
一礼すると、紗穂子は自分の歌う位置まで下がった。
山葉先生が前に出て、両手を上げた。
すぅ、と息を吸う音が確かに聞こえた。